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春は別れ、旅立ちの季節。~さらば寝台特急「北陸」 [歩いて撮ろう(鉄道編)]

急行「能登」の乗車記を書いてから2か月あまり。
急行「能登」、そして寝台特急「北陸」は、多くの人に見送られ、
3月13日ついに廃止されました。

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その模様を書いたブログには、
「たくさんの青春をありがとう」
「列車に揺られた日々のことは忘れない」


など多くの感謝の言葉があふれ、最後の数年間しか利用しなかった私も、
思わず涙してしまいました。格安高速バスに押され、乗客が減っていたとはいえ、
JRの「夜行店じまい」の姿勢は、公共交通機関を預かる会社として、
許されるものなんでしょうか。みんなが飛行機や新幹線の走る時間に
移動できるわけではないのに。

少し感情的になってしまいましたが、
急行「能登」の乗車記を書いたんだから、寝台特急「北陸」の乗車記も
書かねばと思い、ちょうど1年前の未整理の画像を引っ張り出しました。
こんな状態のネタが、私のパソコンのHDDには眠っているんですよ。
ここで書かねば、いつ書くんだという、1年遅れの「北陸」惜別乗車記です。

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2009年3月29日・日曜日。
日本武道館で「らき☆すた」のイベントに参加したあと、私は上野駅に向かいました。
転職後初めて迎えた年度末、心身ともにボロボロになって、逃げるように旅立った帰路のこと。

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青春18きっぷでイヤと言うほど東北方面を旅し、
東京からは奮発して、寝台特急に乗ることにしました。
でも「銀河」は前の年に廃止されたし、あとは北に向かう便しかないし、
どうしようか迷ったときに、「北陸」に白羽の矢が立ったのでした。
通販でバラ売りの回数券を買い、もし当日満席だったなら、
「能登」の自由席で帰るつもりでみどりの窓口へ。

2010-03-14-20.jpg上野駅前には、今でも赤提灯が健在

駅員氏の返事は、「ソロが1席だけ空いてますよ」。
迷わず発券してもらい、「北陸」の乗客となることができました。

2010-03-14-21.jpg昔と変わらぬ上野駅中央改札口


上野駅前のモツ焼き屋で一杯ひっかけ、
「北陸」が出発する13番線に着いたのは、発車時刻の20分ほど前。
すでに先発の青森行き「あけぼの」が出発したあとで、ホームは閑散としていました。

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東京駅にくらべ、関西人にはあまりなじみのない上野駅。
でも東北、北陸、信越方面の玄関口として、この駅に思い入れを
持っている人は多いみたいですね。

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ほどなくして推進運転で「北陸」が入線。
この辺は前に書いたので省略ということで。
ほどよく酔っぱらっていたので、写真をあまり撮らなかったのは残念。

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車内整理が終了し、あまり多くない乗客が車内へ。
開放寝台の号車はガラガラだったようですが、プライバシーの確保できる
個室はやっぱり需要が高いようです。

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発車前の13番ホームは、係員が慌ただしく行き交います

昼間のライブと飲み屋の喧噪で汗びっしょりだったので、
「北陸」ならではのサービス・シャワーカーを利用しようと
車掌さんを待ちかまえます。しかし発車しても、検札に来てくれません。
待ちかねて車掌室のある号車に行くと、どうも個室のカギが故障して閉められなくなり、
代わりの部屋の手配やらで飛び回っていたようです。
*廃止前何年かは、カギのトラブルが多かったようです。老朽化のせいでしょうね。

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寝台の窓から眺める始発駅の駅名標。客車独特の揺れと合わさって、
少しドキドキする瞬間です。


シャワーカーに行くと、この日はすでに先客が。
しかも待合いのソファーには、3~4人のお兄ちゃんが座っていました。
「こっちは早く汗を流したいのに・・・」と少しげんなりしながら、
となりに座らせてもらうと、東京に住む中学生のご一行でした。

ヒマだったので、「君らどこ行くんや?」と聞いてみると、
この「北陸」に乗るためだけに、金沢まで行くんだとか。しかも向こうでは
大した観光もせず、また「北陸」に乗って帰ってくるそうな。

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行きは個室、帰りは開放寝台。最近の中学生はすごいなあ、と
ねたましくなり、「君ら金持ちやねえ」とからかってみたら、

「高校進学したら勉強が大変で、列車に乗って旅行することができなくなるかも
しれないので、1年間お小遣いとお年玉を貯めて、旅費を工面しました」


と返されてしまった、反省。ゴメン、おじさんが悪かった。
まあそれをきっかけにうち解けて、私の乗り鉄自慢話(酔っていたのでつい・・・)に
延々つきあってくれた。みな礼儀正しく、目を輝かせて鉄道の話をしてくれたのが
印象的だった。おかげで「お静かに」と車掌さんに注意されてしまったが。

どうもすいません・・・。

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深夜の水上駅。上越国境を夜行で越えるとき、いつもこの駅で目がさめます

未来ある鉄道ファンたちに元気をもらい、シャワーも浴びてすっきりしたところで、
自分の個室に戻りました。この日も前回の旅と同じく、ソロの下段。
一度上段にも乗ってみたかったが、今となってはかなわぬ夢となってしまいました。
途中水上駅で目がさめた以外は、長旅の疲れもあり爆睡状態。
気がつくと、目的地の高岡が近づいていました。

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定刻の5:49、「北陸」は遅れることもなく高岡駅に到着。
近年は雪やら強風やらで遅れることも多くなった夜行列車ですが、
私の乗る列車は定刻通りに運転されることが多いです。
記憶にある限り、寝台車初体験時の、函館行き「日本海」だけですね。
このときは1本前を走っていた「雷鳥」が踏みきりでトラックと衝突。
福井駅で2時間近く抑止、函館に着いたのは定刻より3時間遅れ。
後にも先にも、列車遅延で特急料金払い戻しになったのは、この1回だけです。
今となってはいい思い出ですが。

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この日の高岡駅は、うららかな春の日差しに包まれていて、
14系の深いブルーを少しやわらかい印象にしていました。
私は漆黒の闇を走り抜けるブルートレインが好きですが、
陽光に照らされるブルートレインもいいですね。

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忙しい身なので、寝台列車にそうたびたび乗れるわけではありません。
だから最近は「これが最後の乗車になるかも」
いつも考えながらをしています。
みどりの窓口で偶然確保できた寝台券に誘われ、
わずか7時間弱の短い旅ではありましたが、廃止の喧噪前に
「北陸」に乗れたことは、幸運だったのかもしれません。



ブルートレイン。

その特別な響きは、子どもだった私をあっという間に虜にした。
学習机にセットされていた、「日本のブルートレイン大百科」のデスクマット。
あの偶然の出会いが、私を鉄道に結びつけてくれた気がする。

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大人になって就職し、最初のボーナスで飛び乗った、ブルートレイン。
それから何度となく寝台車の乗客となり、日本中を駆け回った。

「富士」「だいせん」「はくつる」「彗星」「出雲」「あかつき」「銀河」「はやぶさ」「なは」・・・

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過去帳入りしていった列車たちに、新たに加わった「北陸」。
けわしくきびしい上越国境を、60年もの間、物言わず黙々と越えてきたその歴史が、
あっけなく終わる悲しさ。

けれど悲しさだけが残るわけではない。

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ブルートレインが運ぶさまざまな「空気」に触れた記憶。
それは今でも深く心に刻まれている。

寝台車に初めて足を踏み入れたときの、リネン独特の香り。
真夜中の運転停車で起こされたときの、車内の静寂。
朝起きてガラス越しに見た一面の銀世界と、空気の凛とした冷たさ。

忘れない。決して。


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この線路の上を、この駅のホームを、
青い車体が駆けていったことを。

ブルートレイン。

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実はこの記事、1か月ほど前にほぼ完成していたんですが、
どうしても最後のくだりで納得のいく文章が書けず、そのままになっていました。
それを何とか完成までこぎつけさせてくれたのが、
先ほどたまたま観た、BSジャパンの「北陸」ドキュメント番組。
2回目の放映だったんですね。全然知りませんでした。
変なミーハータレントの登場や、余計な企画もなく、BSらしい好感の持てる番組でした。

これで北陸路を駆ける夜行列車は、
「日本海」と「きたぐに」、「トワイライトエクスプレス」のみ。
まだこれだけの列車が走っていること自体、奇跡に近いこと。
しかし3列車とも車齢が限界に近づいており、廃止の噂が絶えません。
一日でも長く走り続けてくれることを祈るとともに、新車投入を切に願います。
このまま老朽化→廃止ということになれば、関西からの航空・道路事情が悪い、
日本海側へのアクセス手段が一気に失われてしまいます。
これはお互いの地域にとって、ビジネスや観光の機会が削がれる、大変不幸なことです。
もし「補助金がないと走れない」とJRが言うんだったら、そうしてあげれば?と思います。
クルマの走らない高速道路をつくったり、地域ごとに休日をずらすとか、
そんな不経済なことをするよりも、国にとってよっぽど効果的だと思うんですが。
最後にまたちょっと愚痴ってしまいました。どうもすいません。

GWは5/3に上京し、上野から寝台特急「あけぼの」で秋田へ。
何とかB寝台上段を確保できました(どうせほとんど眠らないので、荷物置き場になるかな?)。
そのあと日本海沿岸をひたすら西へとすすみ、5/4夕刻に富山入りします。
城端曳山祭を堪能してきます。「true tears」ファンのみなさま、また城端でお会いしましょう。


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